{"paper_id":"a87b4a27-ecb4-4510-88d7-dc1cecc51a46","body_text":"主論文の要旨 \nFocal Adhesion Kinase-Mediated Sequences, \nIncluding Cell Adhesion, Inflammatory Response, \nand Fibrosis, as a Therapeutic Target in Endometriosis \n細胞接着、炎症反応、線維化を媒介するフォーカルアドヒージョン\nキナーゼは子宮内膜症の治療ターゲットになり得る\n名古屋大学大学院医学系研究科 総合医学専攻 \n発育・加齢医学講座 産婦人科学分野 \n（指導：梶山　広明 教授） \n永井 孝 \n\n【緒言】  \n子宮内膜症とは、子宮内膜が異所性に増殖するという特徴を持つ疾患である。子宮\n内膜症発生機序の仮説の１つに、逆流月経血中の子宮内膜片が腹膜に接着し増殖、進\n展するという移植説がある。この仮説では、逆流月経血中の子宮内膜細胞が細胞外マ\nトリックスへ接着することが子宮内膜症発症における最初の段階と考えられている。\nFocal Adhesion Kinase (FAK) は細胞接着因子であり、細胞内にシグナル伝達を行い、細\n胞機能を制御する。子宮内膜症の特徴の 1 つに慢性炎症が挙げられる。細胞接着と炎\n症の関連については様々な種類の細胞で報告されているが、子宮内膜症における相互\n作用は報告されていない。また、線維化も子宮内膜症の重要な特徴である。子宮内膜\n症における TGF-β1 を介した線維化の報告はあるが、細胞接着との関連は報告されて\nいない。本研究では、子宮内膜症における FAK と炎症、線維化の関連について研究を\nした。 さらに子宮内膜症マウスモデルを使い FAK が子宮内膜症の治療ターゲットとな\nり得るか実験を行った。 \n \n【対象及び方法】  \n2014 年 1 月から 2016 年 8 月の間に当院で採取された正常子宮内膜と子宮内膜症性\n嚢胞のパラフィン包埋組織を使用した。 FAK および MCP-1 の免疫染色を行い、染色\n強度を H スコアで半定量的に評価した。次に、子宮内膜症性嚢胞に遊走したマクロフ\nァージを、 CD68（汎マクロファージマーカー）および CD163（M2 マクロファージマ\nーカー）で確認、さらに TGF-β1 の免疫染色も行った。  \n細胞実験には、子宮内膜症のない患者の不死化された正所性子宮内膜間質細胞\n（Endometrial Stromal Cells, 以下 ESC）、子宮内膜症患者の不死化された正所性子宮内\n膜間質細胞（Endometrial Stromal Cells with endometriosis, 以下 eESC）、不死化された子\n宮内膜症の嚢胞由来間質細胞（ endometriotic Cyst-derived Stromal Cells, 以下 CSC）を\n用いた。ESC 、eESC、CSC をそれぞれ培養して、培養上清中の MCP-1 濃度を測定し\nた。次に CSC をコラーゲン、フィブロネクチン、または何も塗布されていないプレー\nトに播種し、培養上清中の MCP-1 濃度を測定した。さらに FAK 阻害剤、 MEK 阻害剤\nおよび JNK 阻害剤で処理し、培養上清中の MCP-1 濃度を測定した。さらに CSC と\nphorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) でマクロファージ様に分化させた U937 細胞（以\n下、PM\nA-U937 細胞）を共培養して、培養上清中の TGF-β1 濃度を測定した。 CSC に\nTGF-β1 を添加、 培養したものをウェスタンブロットで αSMA を解析した。 さらにCSC、\nTGF-β1 と FAK 阻害剤を同時に投与し αSMA を検討した。 \n最後に子宮内膜症マウスモデルを用いて、 FAK 阻害剤の効果を確認した。作成され\nたマウスの子宮内膜症病変を摘出し、数と大きさを測定しホルマリン固定後、 Ki67、\nMCP-1、F4/80、TGF-β1、α-SMA、ペリオスチンで免疫染色を行って評価した。  \n H スコアは、細胞の染色強度を 0 陰性、1 弱陽性、2 中等度陽性、3 強陽性とし、\n0～3 にそれぞれの細胞の割合(%) を乗じて計算した。 H スコア= [（0 の割合）×0] + [（1 \nの割合）×1] + [（ 2 の割合）×2] + [ （3 の割合） ×3] で表され、H スコアの範囲は 0～ \n- 1 -\n\n300 と定義した。  \n \n【結果】  \n正常子宮内膜と子宮内膜症性嚢胞の免疫染色にて、 FAK および MCP-1 の発現は、\n正常子宮内膜に比べて子宮内膜症性嚢胞で有意に高かった（ FAK; P <0.05 、MCP-1; P \n<0.01）。また、CD68 および CD163 の免疫染色で抗炎症性である M2 マクロファージ\nが遊走し、TGF-β1 が子宮内膜症間質および上皮細胞に共局在していることを発見し\nた（Fig1 ） 。 \n 細胞実験において、 CSC からの MCP-1 分泌は、ESC および eESC からの分泌よりも\n有意に高く（P < 0.005 ）、細胞外マトリックスであるフィブロネクチンでコーティング\nされたディッシュで培養すると MCP-1 分泌は有意に増加した（P < 0.05 ）。この MCP-\n1 分泌は FAK 阻害剤および JNK 阻害剤により分泌が抑制された。 TGF-β1 分泌は、CSC\nのみの培養よりも PMA-U937 細胞と CSC の共培養で有意に高く（P < 0.005 ） 、FAK 阻\n害剤で有意に抑制された（ P < 0.005 ）。また CSC における α-SMA の発現は TGF-β1 用\n量依存性に増加し、FAK 阻害剤によって阻害されることが Western blot によって確認\nされた（Fig2 ） 。 \n子宮内膜症マウスモデルの実験では FAK 阻害剤投与により、 病変の個数および表面\n積が減少し（P < 0.01 ）、さらに子宮内膜症病変の増殖活性を示す Ki67 陽性増殖上皮細\n胞も FA K 阻害剤による治療後に有意に減少した（ P < 0.05） （Fig3） 。 \n子宮内膜症マウスモデルの病変の免疫染色において、 MCP-1、TGF-β1、α-SMA およ\nびペリオスチンの発現は、いずれも FAK 阻害剤によって有意に抑制された。また、 F4 \n/ 80 陽性細胞として同定されるマクロファージの数も減少した（ Fig4） 。 \n \n【考察】  \n本研究では、子宮内膜症発症における細胞接着、炎症、線維化での FAK の役割につ\nいて示した。 \nFAK は、細胞の増殖、移動、浸潤、生存に関与するインテグリンを介したシグナル\n伝達において重要な役割を果たすが、 子宮内膜症の病因における FAK の関与は完全に\n解明されていない。今回の研究で、子宮内膜症間質細胞の MCP-1 分泌が FAK 経路に\nよって媒介されることを示した。 MCP-1 はマクロファージを誘導する作用があり、こ\nの結果は子宮内膜症発症における細胞接着と炎症が関連していることを示している。  \nさらに TGF-β1 分泌は子宮内膜症間質細胞と PMA-U937 細胞の共培養で亢進し、 FAK\n阻害剤によって抑制された。 TGF-β1 は αSMA の発現を用量依存的に亢進させ、 FAK\n阻害剤によって αSMA の発現は抑制された。この結果は子宮内膜症発症における細胞\n接着と線維化が関連していることを示唆する。  \n以上の結果は、 FAK 阻害によって子宮内膜症の炎症および線維化が抑制される可能\n性を示唆するものであり、 これに基づき子宮内膜症マウスモデルを使用して FAK 阻害\n剤の作用を評価した。 FAK 阻害剤により、子宮内膜症病変の数、サイズ、および Ki67\n- 2 -\n\n陽性細胞数が半減したことを発見した。 免疫染色により、 FAK 阻害剤により MCP-1 お\nよび TGF-β1 のレベルが低下するだけでなく、 浸潤したマクロファージの数が減少し、\n子宮内膜症における炎症の抑制が実証された。さらに線維化の指標とされる αSMA と\nペリオスチンの産生も抑制された。これらの結果は、 FAK 阻害剤が子宮内膜症の発症\nにおける一連の過程を阻害する可能性があることを示している。  \n \n【結論】  \n子宮内膜症発症における細胞接着因子 FAK と炎症、線維化の関連について明らかに\nした。FAK が子宮内膜症における治療ターゲットとなる可能性が示され、 FAK 阻害剤\nが子宮内膜症の新規治療薬の候補となり得ることが示された。  \n \n \n \n \n \n- 3 -","source_license":"CC0","license_restricted":false}