{"paper_id":"4c90614e-230e-4ff6-be2b-6549cfe11f92","body_text":"論 文 内 容 の 要 旨 \n \n                     論文提出者氏名 菅沼 泉 \n論 文 題 目 \nPeroxisome Proliferator -Activated Receptor Gamma, Coactivator 1 Alpha Enhances \nLocal Estrogen Biosynthesis by Stimulating Aromatase Activity in Endometriosis  \n \n論文内容の要旨  \n 子宮内膜症は子宮内膜様組織が卵巣や腹膜、骨盤深部などで異所性 に増殖することによ\nって生じる。生殖年齢女性の約 10%が罹患し、骨盤痛や不妊の原因となる。 閉経後これら\nの症状が改善する症例がほとんどであることから、子宮内膜症がエストロゲン依存性疾患\nであることは明らかであり、実際にエストロゲンは子宮内膜症細胞の増殖を促進する。さ\nらに、子宮内膜と比較し子宮内膜症組織ではエストロゲン濃度が高く、エストロゲン生合\n成酵素である アロマターゼが異常発現して いる。それゆえアロマターゼは子宮内膜症局所\nのエストロゲン生合成において重要であり、その制御機構の解明が子宮内膜症研究の課題\nとなっている 。 \nPeroxisome proliferator -activated receptor gamma, coactivator 1 alpha (PGC -1α) は\nエネルギー代謝に関わる遺伝子発現を様々な核内受容体と共に制御する転写共役因子とし\nて知られている。その一方で ステロイド ホルモン 合成調節にも深く 関わっており、乳癌や\n卵巣癌、子宮体癌といったエストロゲン依存性疾患において発現が認められる。しかし、\n子宮内膜症における PGC-1α の発現や機能についての検討はこれまでにない。本研究で は\n子宮内膜症における PGC-1α のアロマターゼへの関与 と子宮内膜症病巣局所におけるエス\nトロゲン生合成への影響 について検討した。  \nまず、 子宮内膜症性卵巣嚢胞と同患者の子宮内膜、子宮筋腫患者 の子宮内膜より採取し\nた病理組織標本における PGC-1α とアロマターゼの発現を免疫組織染色で検討 したところ、\nPGC-1α は子宮内膜症性卵巣嚢胞間質細胞の核と細胞質に発現しており、子宮内膜と比較\nして染色強度が有意に高かった。アロマターゼは子宮内膜症性卵巣嚢胞にのみ発現してお\nり、その局在は一致していた。 また、 子宮内膜症性卵巣嚢胞より採取した組織における\nPGC-1α とアロマターゼの mRNA 発現を real-time PCR を用い検討 したところ、 有意な相\n関を認めた 。 \n次に PGC-1α がアロマターゼの発現に与える影響について検討した。子宮内膜症におけ\nるアロマターゼの発現は核内受容体である steroidogenic factor 1 (SF -1)がアロマターゼプ\nロモーター II の上流に存在する nuclear receptor half -site ( 以下 NRHS)へ結合することに\nより刺激されている。 PGC-1α は SF-1 の転写共役因子としてホルモン調節に関わる遺伝子\n群の発 現調節に関わっていることが知られている。そこで、 ChIP アッセイにより NRHS\nと PGC-1α との相互作用を検討 し確認した。そこで、初代培養子宮内膜症性卵巣嚢胞間質\n細胞、初代培養子宮内膜間質細胞 (以下子宮内膜症間質細胞 、子宮内膜間質細胞 )に PGC-1α\nを強発現 させアロマターゼの発現と機能に与える影響について検討した。子宮内膜症間質\n細胞においては PGC-1α 強発現により NRHS を含んだルシフェラーゼベクターのルシフェ\nラーゼ活性は増加したが、 この反応は NRHS の配列に変異を有するベクターでは認めなか\nった。また、子宮内膜症間質細胞において PGC-1α の強発現によりアロマターゼ、 SF-1 の\nmRNA とアロマターゼ活性が増加し た。しかし、これらの反応は子宮内膜間質細胞では認\nめなかった。アロマターゼは複数の非翻訳エクソン I とそのプロモーターを持ち、組織で\nのアロマターゼ発現はエクソン I の選択とそのプロモーターの刺激により制御されている。\n子宮内膜症はプロモーター I.3 と II を利用していることが知られている。 Exon I 特異的\nRT-PCR により子宮内膜症間質細胞では既報と同じく プロモーター I.3 と II が使用されてい\nることと、PGC-1α の強発現がエクソン I の利用状態に影響を与えないことを確認した。 子\n宮内膜間質細胞ではいずれのエクソン I の発現も認めなかった。また、 子宮内膜症間質細\n胞において PGC-1α を制御する因子について検討した。子宮内膜症間質細胞に対してエス\nトラジオール投与、 TNF-α 投与、低酸素刺激を加えたところ、 TNF-α 投与により有意に\nPGC-1α の mRNA 発現が増加した。  \n 本研究により 、子宮内膜症組織において PGC-1α とアロマターゼの発現は相関し、さら\nに子宮内膜症間 質細胞のアロマターゼ発現 /機能に対して PGC-1α が増加的な効果を持つこ\nとが示された。これは子宮内膜症におけるアロマターゼと PGC-1α の関連を示した最初の\n報告である。また、この効果がプロモーター II の上流に存在する NRHS を介していること\nが示された。 PGC-1α が共役する核内受容体に関しては ChIP アッセイの結果と PGC-1α\n強発現により SF-1 の mRNA 発現が増加していることから PGC-1α が SF-1 を誘導しさら\nに共役することによってアロマターゼ mRNA 発現に寄与していることが推察された。  \n子宮内膜症に おいて PGC-1α を誘導する因子については これまでに報告がないが、\nTNF-α は肝細胞や心筋細胞において PGC-1α の発現を調節することが知られている。 また、\n子宮内膜患者腹水では子宮内膜症細胞自体やマクロファージから過剰な TNF-α が産生され\nており、 子宮内膜症の発症や進展に深く関与している。 これらから TNF-α と PGC-1α を介\nし た 局所 エス トロ ゲン 生 合成の 悪 循環 が存 在し てい る可 能性 が 示さ れる 。そ れゆ え、\nPGC-1α はアロマターゼを介した局所エストロゲン生合成において重要であり、子宮内膜\n症の新規治療標的として期 待できる。","source_license":"CC0","license_restricted":false}